ユーザーインタビュー中島英摩さん「ケガから復帰の3ヶ月。フルマラソン&トレイルランニングレースに出場するまでのトレーニング」

ユーザーインタビュー中島英摩さん「ケガから復帰の3ヶ月。フルマラソン&トレイルランニングレースに出場するまでのトレーニング」

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日本でも数少ない女性アウトドアライターとしてさまざまなメディアで活躍される中島英摩さん。この冬、約3ヶ月にわたりケガから復帰のトレーニングをメインに、日常からフィールドまでにおいて「Amazfit T-REX Ultra」をテスト。女性アスリートとして使用感をレポートしてもらった。

文系ランナー、初心にかえる

 走り始めて10年以上、100km以上の距離を年に数回走る。”ランニングガチ勢”と言われる部類に入るのだと思うけれど、わたしにもランニング初心者だった時代がある。わたしは根っからの文系タイプで、運動を始めたのは社会人になってから。だから最初のころはランニングに何が必要なのかまったくわからなくて、スウェット上下にフラットなスニーカーで走り始めた。ランニングどころかスポーツ経験がほぼないから、効率的なトレーニングとか計画なんてものはわからず、ただがむしゃらに走りまくるのを何年も続けてきた。 

そんな私に、成長をもたらしてくれたのは、間違いなくスポーツウォッチだ。初めのころは距離とペースと心拍くらいの機能だったスポーツウォッチもいまやライフログとして欠かせないスマートウォッチへと進化した。

今回、Amazfitのレビューをすることになったタイミングは奇跡的だった。

なんとトレイルランニングレース中にひどい捻挫と転倒をして、両側靭帯損傷と骨折をしてしまったのだ。全治3ヶ月。それまで積み上げてきたトレーニングは完全に振り出しに戻り、安静と言われる期間にすっかりモチベーションを失い、走る習慣が途絶えてしまった。しかし、3ヶ月後にはケガ前にエントリーしていたマラソンがあった。初心者がマラソンにエントリーしてランニングを頑張る、というイメージでAmazfitを導入してみた。

マイナースポーツもカバーする全スポーツ愛好家向きの最上位モデル

 今回レビューしたのは、複数あるAmazfitの製品のなかでもハイエンドなモデル「Amazfit T-Rex Ultra」。スポーツ向けのスマートウォッチに欠かせないスポーツモードは、ランニング、サイクリング、スイム、スキーといったベーシックなスポーツから、クライミング、釣り、ボクシング、サッカー、バレーボール、アーチェリーに馬術……パラシュートから綱引き、チェス、囲碁まであって驚いた(ス、スポーツなのか?)。わたし自身、登山、ランニング、スキー、バイク、ジムトレなどアクティビティは多岐に渡る。

ちなみにランニングというスポーツモードがあっても、トレッドミルだったりトレイルだったりシチュエーションによって記録にギャップが起きることがあるが、Amazfit T-Rex Ultraには、ランニングとウォーキングだけで8種類もある。また、トラックランモードもあり、ランニングの機能に力を入れていることがわかる。細やかにモードが分かれていることで、初心者〜初級のランナーが「どのモードを選べばいいの?」と迷うこともないし、ストイックなベテランランナーが記録にズレが起きてがっかりすることも少ないのがいい。

アクティブ派は、ひとつに限らず、いろんなスポーツを趣味にしている人は少なくない。夏は山や海を楽しみ、雪の降る時期になればスノースポーツに切り替える。おおよそのスポーツはこれ1本で十分記録できるだろう。

ハイスペックだけど、初心者にこそ使ってほしい

 いまでこそいろんな知識がついて自分でトレーニングプランを考えることもできるようになったが、冒頭で話したとおり走り始めてから数年間は何をどうすれば良いのわからなかった。

ただ走るのが辛くてなかなか距離が伸びなかった時期 ちょっと走り始めて走る距離が増えたらケガをして意気消沈した時期 走れるようにはなったものの伸び悩んだ時期

おそらくこのどれもランナーあるあるだと思う。Zeep Coachが自動的にランニングプランを考え、アドバイスしてくれる。ランニングで心拍数を意識するというのは中級以上にならないとなかなか取り入れる発想にならないもので、最初のうちは「距離」や「スピード」ばかり追いかけがちだ。それが、つらい気分や逆にケガのきっかけになる。

Zeep Coachを使ってみると、心拍数と時間が提示される。このくらいの心拍数で、このくらいの時間を走ってくださいというメニューだ。初心者にとっては新鮮だと思う。心拍数を測れるスマートウォッチのメリットだ。目指すのは距離やスピードじゃない、ただ言われた心拍数を意識するだけでいい。AIコーチが1週間のサイクルで運動強度をコントロールしてくれて、自然と走力向上につながっていくというわけだ。


みんな仕事や家庭があり、提示された時間を取れない時だってある。途中でトレーニングを終えると、今日のトレーニングの何%が終わっているかをカラーバーで表示してくれる。わたしの場合はケガ明けで、一気に長い時間を走ることに不安があった。そんな時は朝と夜に分けてトレーニングを満たすようにした。1日の指標と1週間単位での指標があるので、昨日ダメだったけど今日はできた、と可視化できる。ついつい頑張りがちな人は、100%を超えないようチェックすることができる。

頑張りすぎ、はランニング継続の一番の障壁だと思う。オーバートレーニングによる疲労やケガを防ぐ機能は大事なポイントだ。

走るモチベーションを見つけるきっかけをくれる

 ケガをしてしばらくは、エアロバイクや筋トレに励んでいた。回復には睡眠が大事だと言われ、睡眠のモニタリングは注視した。睡眠についての指標がかなり細かい。睡眠時間だけでなく睡眠の質や呼吸、睡眠のスコアなどいろんな角度から評価される。毎日の記録を続けてチェックすることで、「寝る前の行動で睡眠の質が悪かった」「この日はよく眠れているな」とわかり、より良い睡眠が取れる生活スタイルを意識するようになった。

ケガをしてから3週間半あたりで運動許可が下りた。積極的に動くようにと言われ、少しずつ走り出したが、何せ身体が重くてやる気がわかない……。走りたくない気持ちをなんとか奮い立たせて、走り出す。運動不足すぎて超スローペースですぐに心拍が上がるが、Zeep Coachはそれで良いという。続けて走っているとたまに「上級者!」という表示が出て笑ってしまった。まったくダメダメなのだけど、たしかにいまの自分の精一杯には違いない。習慣化するまでモチベーションを保つのがもっともむずかしいけれど、そのサポートをしてくれる存在になると思う。

フルマラソンは無事に完走できた。トレーニングメニューがなければ、「やばい! フルマラソンどうしよう!練習しなきゃ!」と無茶をしてオーバートレーニングになったかもしれないし、最初に意気込みすぎてすぐ足が痛くなって、落ち込んでそのまま走らなくなったかもしれない。今の自分に見合ったバランスの良いランニングメニューで、じっくり走力アップを目指していくには最適だったと思う。

登山やトレイルランニングでの実用性

 フルマラソン完走後から、山も再開した。わたしのメインアクティビティは登山なので、山で使うのを楽しみにしていた。見るからにタフなボディはやっぱりアウトドアに似合う。スッキリ清楚な顔よりも、このくらい堂々とした頼り甲斐ある顔のほうが好みだ。

長野県在住のわたしは晩秋〜初夏まで雪のついた山を登る。最初に試した時は真冬で登山口は-10℃。稜線はもっと寒かったはずだ。スマートフォンや小さなカメラはたちまち電源が落ちて機能しなくなるが、Amazfitは-30℃まで耐えられるらしい。さすがにそこまでの環境では試していないものの、標高を上げても動きが悪くなることはなく、タッチパネルも問題なかった。

 事前にZEPPアプリ経由でGPSデータを取り込んでおけば、マップを表示してナビゲーションしてくれる機能がある。トレイルランナーにとっては慣れ親しんだ機能だが、トレイルランニングだけでなく、一般登山者でも地図アプリをチェックするためにいちいちスマートフォンを取り出す必要がなく便利な機能だ。スマホをうっかり落としたり、低温環境でスマホの電源が落ちる恐れも少なくなる。大きなディスプレイは視認性がよく、カラーで見やすい。

マップとともに重要になるのはGPSの測位。アクティビティログを取ってアプリにUPするのが定番の今の時代。できるだけ正確に取りたい。Amazfitと過去に使ってきたスポーツウォッチをそれぞれ左右の腕に付けて山を歩いてテストしてみた。6つの衛星システムを使っているとのことで、距離、標高ともにかなり正確で、ほかのウォッチとのズレもなかった。

登山やトレイルランニングでの実用性

 Amazfit T-Rex Ultraでランニングを再開し、山に復帰し、少しずつ体調と体力を取り戻してきた。最大酸素摂取量(VO2 Max)もだいぶ回復してきたころ、香港で開催されたトレイルランニングレースに出場した。1日目 57km、2日目 82km、3日目25kmという3日間のステージを走るレースで、毎日フィニッシュポイントでキャンプをして翌日のレースに挑むというもの。

  4ヶ月間指標としてきた「心拍数」を意識して、まわりが初日のスタートから飛ばすのを横目に心拍が上がりすぎないように抑えて走った。心拍が上がればロードでも平坦でも積極的に歩いた。始めこそどんどん置いていかれたが、後半にもなればまわりがみるみる疲れてくる。わたしはペースを落とさず淡々と走ることで勝手にまわりが落ちて追いついた。じっくりジワジワ持久戦は大成功で、3位、3位、2位でケガなく完走した。レベルの高いレースではないが、いまの自分にとってはケガした箇所を悪化させず完走できて、十分満足な結果となった。

 これ以上強度を上げるとケガが悪化するだろう、これよりももっと追い込める余裕がありそうだ、と調子を伺いながら走ることに慣れた実感があった。がむしゃらに走ることしか知らなかった初心者時代を思い出し、同じ失敗を繰り返さずに堅実に復帰できたことが何よりの収穫だと思う。

完全復帰とは言えない状態のため、雪山登山やスキーもできないウィンターシーズンだった。バイクもほとんど乗れなかった。それゆえ、せっかくの多機能なAmazfit T-Rex Ultraを使いこなせたかというとそうではないが、夏山シーズンには活躍してくれるに違いない。たくさん使うことでそのよさをじわじわ実感してくるタイプのものだと思うので、これからもその魅力を知る過程が楽しみだ。

 

  • 中島英摩さん(なかじま えま)
  • ライター。登山、トレイルランニングなどアウトドアスポーツを中心に取材、執筆をする。一年を通して山に登り、長期縦走や長距離レースなど、長い旅を好む。グラベルバイクでのバイクパッキング旅も好き。山が近い長野県松本市在住、キャンピングカーを愛車に多拠点生活をしている。


    写真・文/中島英摩